「初級点字」草案             河西 白雨
 初級点字 草案


 1.初級点字について

 1−1.目的

 初級点字は、覚えやすく使いやすい点字の規則として提案されたものです。
 覚えたての点字初心者が自信をもって使用でき、また点字の読み書きに慣れた人には可読性が保持されます。初級点字を覚えた初心者は、初級点字が扱う範囲内において、現行の日本点字表記法による点字を読むこともできます。
 近年における情報機器の急速な発達により点字利用者は減少傾向にありますが、点字をとりまく文化全体の活性化を促すためには、点字を「視覚障害者だけのための文字」という認識から解放する必要があると考えられます。文法を簡易化し、習得しやすく書きやすいものにして、視覚障害の有無を越えて使いたい人が誰でも自由に使用できるような点字が求められます。初級点字の最終的な目標および存在意義は、障害の有無による人間同士の文化の壁を低くする一助となることにあります。
 2009年は6点点字開発者のルイ=ブライユ生誕から200年目にあたり、そして日本点字の翻案者・石川倉次の生誕150年にあたります。この節目に、日本語を使用するすべての人にとって身近な点字文化をつくるための試みのひとつが、文法規則に新しい工夫を施した初級点字なのです。

 1−2.位置づけ

 初級点字は、点字初心者にもやさしい文法と文の形式を実現するために、日本点字表記法を礎として独自に研究開発された点字の規則です。
 日本点字の利用者対象は、一般に視覚障害者にほぼ限定されていますが、これに対して初級点字は、活字寄りの点字、初心者や晴眼者寄りの点字として、日本語利用者のすべてを対象に想定し、現行の日本点字表記法と並存するように考案されました。
 現行の日本点字表記法のあり方では、主な目的を、視覚障害者の触読と、そのための点訳作業としており、用法をきちんとマスターするためには、ふつう数ヶ月から数年という時間を要します。初級点字では、日本語使用者のすべてを想定し、初心者・晴眼者・年少者などにも、短時間の学習で完成度の高い点字表現を習得できることを目標としています。また、活字原本の点訳よりも直接の点字書きを主に配慮し、社会一般で点字が自由な表現手法のひとつとして幅広く活用されることを目指しました。
 こうして点字初心者や晴眼者に門戸を広げることで、点訳に携わりたい人には一般の点字を習得するための足がかりとなり、また、点訳やボランティアに直接関わりがなくても、文字ツールとして気軽に活用することができるようになると期待されます。
 ちなみに、英語の点字には、難易度や用法の違いでGradeT、UないしVと段階が設けられています。この英語の点字のGradeTに相当する日本点字が初級点字である、と捉えても差し支えありません。
 ただし、初級点字は文法についてのみの工夫であるため、一般的なサイズの点字を触読できるようになるためには、慣れや訓練が必要になります。

 1−3.方針

 初級点字はまず、自然な使い方ができる簡潔な規則を目指します。
 点字初心者にも理解できて、しかもすぐに使用できるように、判断に迷うようなルールは減らし、煩雑な文法用語を用いなければ説明ができないような規則を極力避けました。
 そのため、初級点字の表記法は通常の点字表記法よりも自由度が高くなっています。書き手の判断に任せることで、表現が誤りである場合を少なくしました。また、点訳の際に個人差による表記のゆれを低減できるよう、基本規則に追記する形で目安となる方法を示しました。
 ただし、初級点字は日本語の現代文の用法に留まり、古文・漢文や専門性の高い表記や方言などについては言及しないこととします。それらについては、初級点字の表記法から類推・工夫するか、日本点字表記法に基づく方法で行なってください。

 1−4.規則の方向性

 (1)分かち書きで迷う場合には、なるべく語と語を続ける方向性を持つようにした。
 (2)表記の際にできるだけ迷いが生じないようにし、迷っても各自で判断ができるようにした。
    たとえば「する」や「ない」などを続けるか否かの判断では、その用法や品詞の分析を経ることなく、同じ処理で済むようにした。
 (3)文節分かち書きを土台としながら、それ以上に自然な区切れめになる分かち書きにした。
 (4)点字文の書き手による表記の自由度を確保した。すなわち、表記のゆれの範囲を明確にして許可した。
 (5)より墨字に近い要素を持つ点字の表記法にした。
 (6)現行の日本点字表記法を礎としながら、それとは完全に区別され、独立並存する内容にした。
 (7)現行の日本点字表記法との相互間における可読性を、初級点字の扱う範囲内ならば、多少の類推をすれば完全に保持されるようにした。

 1−5.扱わない表記
 
 以下の表記については、初級点字では特に言及・使用をしないこととした。

 (1)古文・漢文・方言、ローマ数字、ギリシャ文字など英語以外の外国語の文字
 (2)楽譜記号、理科記号、情報処理用点字、複雑な単位記号、複雑な数学記号、その他の専門性の高い表記、特殊な記号
 (3)段落挿入符、小見出し符類、第2つなぎ符、文中注記符、第3星印、詩行符類、第2カギ、第2カッコ、イタリック符類、レターサイン、など
 (4)図、点図、マーク類、奥付



 2.初級点字の表記法


 2−1.前提

 2−1−1.初級点字は、日本語の現代文を基にしたとき、次の項目を経て表記される。
     この「2−1.前提」と「2−2.原則」を基本とし、「2−3.分かち書き」がポイントとなり、「2−4.記号・数・英字」で完成させ、「2−5.形式」で表記全体をまとめることになる。
     
 2−1−2.すべての事項を順番にみて、先に示される事柄よりも、後に示される事柄のほうを優先する。
     すなわち、大まかで影響範囲が広いものほど先に示し、細部の規則ほど後に示した。規則が対立する場合にも、後に示される規則に従うこととする。先に示される事柄を優先する場合には、特に限定的な説明を示した。

 2−1−3.墨字原文を点訳するときに、表記のゆれが小さくなるような規則を示した。
     その一方で、墨字原文のない点字書きの場合を考え、書き手の表現の自由を尊重するために、「ただし適宜」と前置きして示す方法で表記のゆれを確保し、別の表記を可能とした。

 2−1−4.規則の通りに行なって、空マスが前後に連なる場合には、加算せずに個数の多いほうの空マスで処理する。
     なお、「区切る」という場合は、1マス空けることを示す。「続ける」という場合は、空マスを挟まずにそれを置くを示す。「挟む」という場合は、それのみを間に挿入することを示す。


 2−2.原則

 2−2−1.日本語の現代文は現代仮名遣いに基づき、点字の音節表記で表す。   

 2−2−2.「わ」と発音する「は」、「え」と発音する「へ」については、発音どおりに表記する。
     それ以外は発音に関わらず、そのまま表記する。(現行の日本点字表記法での長音化する「う」などは用いない)

 2−2−3.文節分かち書きを土台にして、さらに諸々の処理を行なう。
     これについては「2−3.分かち書き」で詳しく示すことにした。


 2−3.分かち書き

 2−3−1.文節分かち書きを土台にして、その後の規則を加えて行なう。
     つまり、付属語(助詞・助動詞)なら前の語に続け、自立語なら前を区切って空マスを1つ入れることを、分かち書きの基礎にして、その後の手続きを踏んでいくということになる。
     「文節」は、間投助詞「ね」や「な」を挟める語の区切れの最小単位として大まかに判断できる。点字による表記では、漢字かな混じりでの表記をしないが、その代わりに「分かち書き」を用いて文を分かりやすく表記する。「分かち書き」とは、空マスで語を区切って表記することである。文節ごとに1マスの空白を挟む分かち書きを「文節分かち書き」という。
     
 2−3−2.助詞「の」は、前後の語に続ける。
     ただし適宜、助詞「の」の後で区切ることもできる。
     
 2−3−3.「こそあど」の指示語の後は、続ける。
     (例:こう、そう、ああ、どう、これ、あれ、そこ、どこ、この、どの、あいつ、そいつ、あっち、そっち、どんな、こんな、そちら、あちら、どんな、こんな)
    
 2−3−4.漢語・和語・外来語などの名詞・形容詞・副詞のすぐ後ろに、付属語を挟まずに動詞が来る場合は、続ける。
     (例:乗車できる、ご来場いただく、お願いします)

 2−3−5.複合動詞は、続ける。
     (例:走り去る、明け暮れる、満ち溢れる、垣間見る、聞き捨てならない、優しすぎる)

 2−3−6.補助動詞(形式動詞)は、前に続ける。
     補助動詞とは、本来の意味と独立性を失って付属的に用いられる動詞のことである。
     (例:降ってイル、書いてミル、空けてオク、話してクレル、教えてクダサイ、増えてイク、食べてシマウ、点字でアル、)

 2−3−7.内部に助詞を挟む複合動詞などの、動詞連続の場合にも、続ける。
     (例:走って回る、期待して終わる、間に合う、いてもたってもいられない)

 2−3−8.動詞「する」とその使役・受身・丁寧・尊敬になる語は、前に続ける。
     漢語・和語・外来語などの名詞・副詞に付いて、動詞を形成するときも同じである。
     (例:そうして、少しすると、解する、恋して、関して、達成する、開始する、スケートする、お茶する、覚悟せよ)

 2−3−9.上記の「する」と同じように、「ある」「おる」「なる」「なす」「いる」「いく」「やる」「あげる」「くれる」「もらう」とその使役・受身・丁寧・尊敬になる語は、前に続ける。
     (例:失礼いたす、お出でなさる、そちらにおられる、君にやった)

 2−3−10.否定や消滅を表す助動詞・名詞あるいは形容詞の接尾語である「ない」の類は、前に続ける。
     (例:言葉ではナイ、はしたない、聞かない)

 2−3−11.動詞「いう」とその使役・受身・丁寧・尊敬になる語は、前に続ける。
     (例:そういう、なんという、来いと言った、俗にいう、よく申す、こう仰る)

 2−3−12.複合形容詞は、続ける。
     (例:面白おかしい、使いにくい、重苦しい、住みよい、人間くさい)

 2−3−13.形容詞「いい」「よい」「悪い」は、前に続ける。
     (例:気持ちいい、非常によい、具合悪い)

 2−3−14.補助形容詞(形式形容詞)は、前に続ける。
     補助形容詞とは、本来の意味と独立性を失って付属的に用いられる形容詞のことである。
     (例:帰ってヨイ、言ってホシイ)

 2−3−15.形式名詞は、前に続ける。
     つまり、前の文節の直後に付属して、後から説明を補う漠然とした名詞は、前に続ける。
     形式名詞とは、名詞としての実質的意義がなく、常にその意義を限定する修飾語が前について抽象的な意味を表す名詞である。
     (例:こと、もの、とき、ころ、ほど、ところ、よし、むね、まま)

 2−3−16.墨字の漢字で「言う」「行く」「良い」などは、それぞれ「いう」「いく」「よい」と表記する。
     墨字がひらがなならば、その表記に従う。
     ただし適宜、「ゆう」「ゆく」「いい」と表記してもよい。

 2−3−17.自立語内部の分かち書きの有無に関する規則を、とくに「切れ続き」というが、初級点字では、「切れ続き」は区切らずに、すべて続けることを基本とする。
     
 2−3−18.複合名詞は、続ける。
     (例:満員電車、期待外れ、大気汚染、生物大進化)
     ただし適宜、空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。

 2−3−19.接頭語・接尾語・造語要素は、墨字の通り自立語に続ける。
     ただし適宜、分かりやすく空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。
     (薄明るい、どでかい、ご婦人、もて余す、旧石器時代、全世界的)

 2−3−20.人名や固有名詞のなかは、区切らずに続ける。
     人名や固有名詞のなかの中点・「-」・「=」は、省略して続ける。
     ただし適宜、空マスや第一つなぎ符に換えてもよい。
     (例:夏目漱石、石川倉次、杜甫、ロマンロラン、レオナルドダヴィンチ)

 2−3−21.敬称・立場・造語要素で、人名や名称の前後に付属的に接続しているものは、続ける。
     ただし適宜、分かりやすく空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。
     (例:元哲学教師、ルイブライユさん、故石川倉次先生、ネス湖)

 2−3−22.省略に用いる中点・ピリオドは、省略して続ける。
     ただし適宜、中点と区切り、またはピリオドと区切り、を挟んでもよい。
     (例:U.S.A、P.S.、P・T・A)

 2−3−23.繰り返しの表現が連続し、接している場合は、続ける。
     (例:おのおの、場所場所、(自転車を)こぎこぎ、任せとけ任せとけ、遠く遠く、知らず知らず)
     ただし適宜、途中で分かりやすく区切ってもよい。

 2−3−24.墨字でカタカナあるいはひらがなのみを用いた複合語や固定的な表現は、続ける。
     (例:アイスクリーム、サウジアラビア、ゴールデンアワーズスペシャル)
     ただし適宜、分かりやすく空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。

 2−3−25.擬声語や擬態語などでカタカナあるいはひらがなのみを用いた複合語は、続ける。
     (例:ドタドタドタドタ、ふわりふわり、リーンリーン、ずかずか、がたごとがたごと、)
     ただし適宜、途中で分かりやすく区切ってもよい。

 2−3−26.ただし適宜、ことわざや慣用句は、すべて続けてもよい。
     (例:やもたてもたまらず、手取り足取り、光陰矢のごとし、犬も歩けば棒に当たる、石の上にも三年)


 2−4.記号・数・英字

 2−4−1.記号

 2−4−1−1.句読点は、前に続ける。
     読点の後は1マス空け、句点の後は2マス空ける。

 2−4−1−2.ピリオド・「?」・「!」など、文末に単独で用いることのできる記号類は、前に続け、後を2マス空ける。

 2−4−1−3.コンマ・中点・スラッシュなど、ふつう文末では用いない単独の記号類は、基本的に前に続け、後を区切る。

 2−4−1−4.「!?」は「!」「?」と続けて表記するように、記号どうしが続く場合は、その間を区切らない。

 2−4−1−5.棒線(ダッシュ)・点線・矢印類・第1星印・第2星印・「%」・「&」・「#」・「*」は、前後を区切る。

 2−4−1−6.波線・イコールは、前後を続ける。

 2−4−1−7.第1星印と第2星印は、墨字の「☆」や「※」など注意を引く必要のあるところで用いる。
     いずれも第1星印で表し、間に合わないときのみ第2星印を用いる。
     ただし適宜、どちらの星印を使用してもよい。

 2−4−1−8.空欄符号は、空白枠・空白括弧・空白傍線として用いる。
     分かち書きは、その空欄符号に入るべき内容とみなして行なう。
     空欄符号は、中の長さを長くしたり、短く1つで済またり、空欄符号をいくつも続けたりできる。
     
 2−4−1−9.空欄符号のなかに文字が入る場合は、その文字を第1カッコで囲み、空欄符号の前に置く。
     このとき、第1カッコの前は区切り、第1カッコと空欄符号の間は続ける。

 2−4−1−10.伏せ字の分かち書きは、そこに入るべき内容の文字とみなして行なう。

 2−4−1−11.数字の伏せ字は「め」1字で表し、5の点は使用しない。 

 2−4−1−12.小文字符は、仮名の小文字を特に単独で示すときにのみ、仮名の前に続けて用いる。
     促音「っ」や、音節の要素には、小文字符は用いない。


 2−4−2.囲みの符号

 2−4−2−1.囲みの符号のうち、カッコ類(第1カッコ・二重カッコ)と点訳者挿入符は、基本的に内側も外側も続ける。

 2−4−2−2.カッコ類・点訳者挿入符ではない、それ以外の囲みの符号の内側は続け、外側は区切る。

 2−4−2−3.囲みの符号と記号とが続くときは、囲みの符号の内側も外側も、記号との間を区切る。

 2−4−2−4.別の囲みの符号どうしが続く場合は、同じ向きでも反対向きでも、基本的にその間を区切る。

 2−4−2−5.第1カッコは、振り仮名にも用いる。この場合、振り仮名を振る表記の後に続ける。
     第1カッコを用いた振り仮名は、英字につく場合も数字につく場合も、振り仮名を振る表記の後に続ける。

 2−4−2−6.指示符類は、傍点・字体変更・アンダーラインなどのかわりに用いる。
     分かち書きは、指示符のなかに入るべき内容で行なう。
     主に、第1指示符は傍点、第3指示符はアンダーラインに用いる。第2指示符は、それでも足りない場合に使用する。
     ただし適宜、どの指示符を使用してもよい。

 2−4−2−7.日本語の文章内で英文や英単語が挿入される場合には、外国語引用符でそれを囲う。
     外国語引用符のなかには、英字とその記号しか入らない。

 2−4−2−8.発音記号を用いる場合には、発音記号符でそれ囲う。
     発音記号符のなかには、発音記号しか入らない。

 2−4−2−9.分かりにくい表記の後には、補足説明をつけるのがよい。
     たとえば、同音異義語、複合語、漢字、図表などで、説明したほうが理解しやすくなる場合などに補足説明をつける。
     補足説明は点訳者挿入符で囲う。

 2−4−2−10.発音記号を用いるとき、日本語の文のなかでは、発音を表す記号を、発音記号符で囲う。
     英文のなかでは、それをさらに第1カッコで囲う。この時、発音記号符と第1カッコとが接するところは区切らない。


 2−4−3.数

 2−4−3−1.数字を表すには、数を示すコマの前に、数符を置く。
     数符の前は、区切る。

 2−4−3−2.数字の後は、区切る。

 2−4−3−3.数字が読点・中点・コンマで区切られながら連なっている場合、読点・中点・コンマのかわりに数符を置く。
     数符の前は、区切る。

 2−4−3−4.純粋に数として取り扱われるものは数字として表記し、慣用句や名詞や漢語的表現のなかでの数は、読みの通りに仮名で表記する。
     墨字で、位を表す漢数字を用いている場合は、読みの通りに仮名で表す。
     ただし適宜、読みの通りの仮名で表したり、数字で表してもよい。

 2−4−3−5.丸数字は、下がり数字の前に数符をつけて表記する。

 2−4−3−6.数と、仮名との間は、一続きに表す語であっても、前後に関わりなく区切る。
     ただし適宜、空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。

 2−4−3−7.数式内では、すべて続ける。数式の前後は区切る。

 2−4−3−8.数式内にある仮名は、第1カッコで囲う。


 2−4−4.英字

 2−4−4−1.表記するのが英文のみの場合は、そのまま英文の点字で表記する。
     日本語の文章内に、英文や英単語が挿入される場合は、外国語引用符を用いる。
     日本語の文のなかで、英字による表現がある場合には、外字符を用いる。

 2−4−4−2.日本語を使用する文のなかで英字を表すには、英字を示すコマの前に外字符を置き、外字符の前は区切る。
     外字符は、空マスを挟まず続ける範囲をのみ英字と示すので、空マスを挟んで英字が続く場合は、外字符を付け直す。
     
 2−4−4−3.英字は、小文字の場合はそのまま表記し、大文字1文字の場合は大文字符を前に置く。
     その後がすべて大文字の場合は、初めの英字の前に二重大文字符を置く。

 2−4−4−4.仮名と、英字との間は、一続きに表す語であっても、前後に関わりなく区切る。
     ただし適宜、空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。
     (例:Tシャツ、UVカット、ドクターK)

 2−4−4−5.英字と数字との間は、一続きに表す語であっても、前後に関わりなく区切る。
     ただし適宜、空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。
     (例:100kg、2LDK、R246)


 2−5.形式

 2−5−1.文の初めは、2マス空けて文を始める。
     段落の始まりも文の初めで2マス空けると考え、2マス下がって書き出すこととなる。
     ただし適宜、文章が短い場合などは、段落の初めを空けなくてもよい。

 2−5−2.改行は、墨字と同じように語の途中で途切れて次の行に移る。
     そのとき、音節・1つの記号・1つの英字の、途中では改行しない。その前のところで次の行へと移る。
     また、改行は空白を含めて行なう。つまり、改行のときに文末まで字がきて丁度区切りになるときは、次の行の初めに空マスを1つおいて始めることになる。

 2−5−3.詩・短歌・俳句などで、文中にスペースが入るところには、空マスを2つ置く。

 2−5−4.ここから以下に示す表記の形式については、規則というより参考として示すに留まった。墨字と同じであることを基本とするが、点字にするための工夫を各自で行なう。

 2−5−5.題名は、前を6マス空ける。
     副題は、前を4マス空ける。
     ただし適宜、その空マスの数を変えてもよい。

 2−5−6.墨字で行があいていれば、点字文でも行あけをする。
     ただし適宜、行あけを省略してもよい。 

 2−5−7.日付・著名・付記など、墨字で右寄せするものは同じように右寄せし、墨字で右寄せの際に1字分あきがあれば、同じように1マスあける。
     ただし適宜、これも変更してよい。

 2−5−8.詩において、すべての行の左端を2マスずつ空けて揃えることもできる。
     短歌において、後半を改行して4マス空けて続けることもできる。

 2−5−9.表を表すときは、表の題も含む内容全体の上下の行に、枠線を置く。枠線は、長音符を連ね、両端のみ折れて角をつくる。

 2−5−10.表では、上の枠線、表の題名、説明書き、表の内容、下の枠線、の順で記す。
    表では、上下の枠線以外の線はなるべく省略する。すなわち、横線は省略し、縦線のかわりに縦列の初めを揃えて明瞭に表記する。
    表で示すべきその他の情報は、題のすぐ下の行から、説明書きに書き換えて表記するとよい。
    説明書きと表の内容との間は、行あけを行なう。

 2−5−11.表紙では、全体を中央寄せにする。

 2−5−12.表紙の題名は四方を枠で囲う。枠は、外縁部を縁取るように直線を示す点字を連ね、端にのみ角をつくる。
    題名と枠との間は、上下は空けず、左右はできれば2マス空ける。
    表紙の題名を囲う枠は、四方でなく上下のみでもよい。
    また、その囲い枠のなかに、題名の下に副題や巻数などを記してもよい。

 2−5−13.これらの囲い枠などは、線形のかわりに、単調に連続するパターンの点字を連ねて装飾的にしてもよい。

 2−5−14.表紙に記す内容は、上から順に、著者・訳者・題名・副題・巻数などとする。

 2−5−15.表紙全体の一番外側を、線を示す点字を用いた枠で囲うと、表紙であることが分かりやすい。

 2−5−16.ページ数は、表紙と目次とを除いたところから数え始め、奇数ページのみを、右上の端に数符をつけて示す。
    表紙や目次にページ数をつけるときは、それと区別して下がり数字を使用してもよい。

 2−5−17.目次は、表と同じやり方で表記し、表に使う上下の枠線を省く。
    文とページ数との間に、点線を置いてもよい。点線の両端は区切る。



 3.やさしい説明による初級点字の表記法


 3−1.前提

 3−1−1.この章では、「2.初級点字の表記法」を、やさしく説明し直しました。
     
 3−1−2.順番に読んで、先に示されるざっくりとした規則よりも、後にくる細かな規則のほうに最終的には従います。先に示される規則が優先されるときは、特にそのことを説明してあります。

 3−1−3.規則どおりでなくてもよい方法があるときは、「ただし」と前置きして示します。

 3−1−4.規則どおりにすると前後で空マスが連なる場合は、数の多い個数の空マスを置きます。


 3−2.原則

 3−2−1.日本語の現代文を、点字での仮名表記に換える。
    
 3−2−2.「わ」と発音する「は」、「え」と発音する「へ」については、発音どおりに表記する。

 3−2−3.文の初めは、2マス空ける。

 3−2−4.語を区切って1マス空けることを「分かち書き」という。


 3−3.分かち書き

 3−3−1.「〜ね」や「〜な」と同意を求める相づちを挟める所で区切り、その都度1マス空ける方法を「文節分かち書き」という。これを土台にして、その後の手続きを踏んでいく。

 3−3−2.「〜の」は、前後とも続ける。
     ただし、「〜の」の後で区切って空マスを入れることもできる。
     
 3−3−3.「こそあど」言葉の後は、続ける。
     (例:こう、そう、ああ、どう、これ、あれ、そこ、どこ、この、どの、あいつ、そいつ、あっち、そっち、どんな、こんな、そちら、あちら、どんな、こんな)
    
 3−3−4.漢語・和語・外来語などの名詞・形容詞・副詞などのすぐ後ろに、直接に動詞が来る場合は、続ける。
     感覚としては、前の語がブツッと切れたすぐあとに、動詞が来るときは続ける。
     (例:乗車できる、ご来場いただく、お願いします、関係しません)

 3−3−5.2つ動詞が続けば、続ける。
     (例:走り去る、明け暮れる、満ち溢れる、垣間見る、聞き捨てならない、優しすぎる、間に合う)

 3−3−6.2つの動詞の間に「て」「で」があっても、続ける。
     (例:走って回る、期待して終わる、いてもたってもいられない)

 3−3−7.「する」の仲間(「いたす」「される」「させる」など)は、すべて前に続ける。
     (例:そうして、少しすると、和する、解する、恋して、関して、達成する、開始する、スケートする、お茶する、覚悟せよ、君にやった)

 3−3−8.「ある」「いらっしゃる」「おる」「ござる」「なる」「なす」「なされる」「なられる」「いる」「いく」「いかれる」「やる」「やられる」「あげる」「くれる」「もらう」「いただく」「いう」の仲間も、前に続ける。
     つまり、在ったり、居たり、成ったり、言ったり、行ったり(「来る」は「いらっしゃる」しか含まない)、あげたりもらったりの仲間の動詞は、続ける。
     (例:失礼いたす、お出でなさる、そこにおられる、増えてイク、点字でアル)
     (例:そういう、なんという、来いと言った、俗にいう、よく申す、こうおっしゃる)

 3−3−9.「ある」とか「ない」「なし」「なくなる」の仲間は、前に続ける。
     (例:はしたない、くだらない、もったいない、いかない、いない、それではない)

 3−3−10.いくつか語が連なってできている形容詞は、続ける。
     (例:面白おかしい、使いにくい、重苦しい、住みよい、人間くさい)

 3−3−11.価値判断の意味がある「いい」「よい」「悪い」の仲間は、前に続ける。
     (例:気持ちいい、非常によい、具合悪い)

 3−3−12.意味が薄まっている形容詞・名詞・動詞は、前にくっつける。
     (例:帰ってヨイ、言ってホシイ)
     (例:こと、もの、とき、ころ、ほど、ところ、よし、むね、まま)
     (例:降ってイル、書いてミル、空けてオク、教えてクダサイ、食べてシマウ)

 3−3−13.墨字の漢字で「言う」「行く」「良い」の場合は、「いう」「いく」「よい」と表記する。
     墨字がひらがなならば、それに従う。
     ただし、「ゆう」「ゆく」「いい」と表記してもよい。

 3−3−14.自立語のなかは区切らないで、すべて続けることを基本とする。
     
 3−3−15.複合名詞は、続ける。
     (例:満員電車、期待外れ、大気汚染、生物大進化)
     ただし、空マスや第一つなぎ符を入れることもできる。

 3−3−16.自立語につく説明的な小さな語は、続ける。墨字で区切る場合は、区切る。
     ただし、空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。
     (薄明るい、どでかい、ご婦人、もて余す、旧石器時代、全世界的)

 3−3−17.人名や名称は、なかを区切らずに続ける。
     人名や名称のなかに中点・「-」・「=」があっても、省いて続ける。
     ただし、中点のかわりに空マスを入れ、「-」や「=」のかわりに第1つなぎ符を入れることもできる。
     (例:夏目漱石、杜甫、ロマンロラン、レオナルドダヴィンチ)

 3−3−18.人名や名称の前後に続く敬称・立場・造語要素は、続ける。
     ただし、分かりやすく空マスや第一つなぎ符を入れることもできる。
     (例:元哲学教師、ルイブライユさん、故石川倉次先生、ネス湖)

 2−3−19.省略に用いる中点・ピリオドは、省略して続ける。
     ただし、中点と区切り、またはピリオドと区切り、を挟んでもよい。
     (例:USA、PS、PTA)

 3−3−20.ひと続きの繰り返し言葉は、続ける。
     (例:おのおの、場所場所、(自転車を)こぎこぎ、任せとけ任せとけ、遠く遠く、知らず知らず)
     ただし、途中で区切ってもよい。

 3−3−21.墨字でカタカナあるいはひらがなだけの、いくつかつながった語や、固定的な表現は、続ける。
     (例:アイスクリーム、サウジアラビア、ゴールデンアワーズスペシャル)
     ただし、空マスや第一つなぎ符を挟んでもよい。

 3−3−22.擬声語や擬態語などでカタカナあるいはひらがなだけの、いくつかつながった語は、続ける。
     (例:ドタドタドタドタ、ふわりふわり、リーンリーン、ずかずか、がたごとがたごと、)
     ただし、途中で区切ってもよい。

 3−3−23.ただし、ことわざや慣用句は、すべて続けてもよい。
     (例:やもたてもたまらず、手取り足取り、光陰矢のごとし、犬も歩けば棒に当たる、石の上にも三年)


 3−4.記号・数・英字


 3−4−1.記号

 3−4−1−1.「。」の前は続け、後は2マス空ける。「、」の前は続け、後は1マス空ける。

 3−4−1−2.「.」・「?」・「!」など、文末に単独で用いることのできる記号類は、前に続け、後を2マス空ける。

 3−4−1−3.「,」・「・」・「/」など、ふつう文末では用いない単独の記号類は、基本的に前に続け、後を区切る。

 3−4−1−4.「!?」は「!」「?」と続けて表記するように、記号どうしが続く場合は、その間を区切らない。

 3−4−1−5.「―」・「…」・「→」・「←」・「⇔」・「☆」・「※」・「%」・「&」・「#」・「*」は、前後を区切る。

 3−4−1−6.「〜」・「=」は、前後を続ける。

 3−4−1−7.第1星印と第2星印は、墨字の「☆」や「※」など注意を引く必要のあるところで用いる。
     いずれも第1星印で表し、間に合わないときのみ第2星印を用いる。
     ただし、どちらの星印を使用してもよい。

 3−4−1−8.空欄符号は、空白枠・空白括弧・空白傍線として用いる。
     分かち書きは、その空欄符号に入るべき内容とみなして行なう。
     空欄符号は、中の長さを長くしたり、短く1つで済またり、空欄符号をいくつも続けたりできる。
     
 3−4−1−9.空欄符号のなかに文字が入る場合は、その文字を第1カッコで囲み、空欄符号の前に置く。
     このとき、第1カッコの前は区切り、第1カッコと空欄符号の間は続ける。

 3−4−1−10.伏せ字の分かち書きは、そこに入るべき内容の文字とみなして行なう。

 3−4−1−11.数字の伏せ字は「め」1字で表す。 

 3−4−1−12.小文字符は、仮名の小文字を特に単独で示すときにのみ、仮名の前に続けて用いる。
     促音「っ」や、音節の要素には、小文字符は用いない。


 3−4−2.囲みの符号

 3−4−2−1.カッコ類(第1カッコ・二重カッコ)と点訳者挿入符は、基本的に内側も外側も続ける。

 3−4−2−2.カッコ類・点訳者挿入符ではない、それ以外の囲みの符号の内側は続け、外側は区切る。

 3−4−2−3.囲みの符号と記号とが続くときは、囲みの符号の内側も外側も、記号との間を区切る。

 3−4−2−4.別の囲みの符号どうしが続く場合は、同じ向きでも反対向きでも、基本的にその間を区切る。

 3−4−2−5.第1カッコは、振り仮名にも用いる。この場合、振り仮名を振る表記の後に続ける。
     第1カッコを用いた振り仮名は、英字につく場合も数字につく場合も、振り仮名を振る表記の後に続ける。

 3−4−2−6.指示符類は、傍点・字体変更・アンダーラインなどのかわりに用いる。
     分かち書きは、指示符のなかに入るべき内容で行なう。
     主に、第1指示符は傍点、第3指示符はアンダーラインに用いる。第2指示符は、それでも足りない場合に使用する。
     ただし、どの指示符を使用してもよい。

 3−4−2−7.日本語の文章内で英文や英単語が挿入される場合には、外国語引用符でそれを囲う。
     外国語引用符のなかには、英字とその記号しか入らない。

 3−4−2−8.発音記号を用いる場合には、発音記号符でそれ囲う。
     発音記号符のなかには、発音記号しか入らない。

 3−4−2−9.分かりにくい表記の後には、補足説明をつけるのがよい。
     たとえば、同音異義語、複合語、漢字、図表などで、説明したほうが理解しやすくなる場合などに補足説明をつける。
     補足説明は点訳者挿入符で囲う。

 3−4−2−10.発音記号を用いるとき、日本語の文のなかでは、発音を表す記号を、発音記号符で囲う。
     英文のなかでは、それをさらに第1カッコで囲う。この時、発音記号符と第1カッコとが接するところは区切らない。


 3−4−3.数

 3−4−3−1.数字を表すには、区切り、数符、数を示すコマ、区切り、の順で表記する。

 3−4−3−2.数字が読点・中点・コンマで区切られながら連なっている場合、読点・中点・コンマのかわりに数符を置く。
     数符の前は、その都度区切る。

 3−4−3−3.純粋に数として取り扱われるものは数字として表記し、慣用句や名詞や漢語的表現のなかでの数は、読みの通りに仮名で表記する。
     墨字で、位を表す漢数字を用いている場合は、読みの通りに仮名で表す。
     ただし、仮名で表したり、数字で表してもよい。

 3−4−3−4.丸数字は、下がり数字の前に数符をつけて表記する。

 3−4−3−5.数と、仮名との間は、一続きに表す語であっても、前後に関わりなく区切る。

 3−4−3−6.数式内では、すべて続ける。数式の前後は区切る。

 3−4−3−7.数式内にある仮名は、第1カッコで囲う。


 3−4−4.英字

 3−4−4−1.表記するのが英文のみの場合は、そのまま英文の点字で表記する。
     日本語の文章内に、英文や英単語が挿入される場合は、外国語引用符を用いる。
     日本語の文のなかで、英字による表現がある場合には、外字符を用いる。

 3−4−4−2.日本語を使用する文のなかで英字を表すには、英字を示すコマの前に外字符を置き、外字符の前は区切る。
     外字符は、空マスを挟まず続ける範囲をのみ英字と示すので、空マスを挟んで英字が続く場合は、外字符を付け直す。
     
 3−4−4−3.英字は、小文字の場合はそのまま表記し、大文字1文字の場合は大文字符を前に置く。
     その後がすべて大文字の場合は、初めの英字の前に二重大文字符を置く。

 3−4−4−4.仮名と、英字との間は、一続きに表す語であっても、前後に関わりなく区切る。
     (例:T□シャツ、UV□カット、ドクター□K)

 3−4−4−5.英字と、数字との間は、一続きに表す語であっても、前後に関わりなく区切る。
     (例:100□kg、2□LDK、R□246)


 3−5.形式

 3−5−1.文の初めや段落の初めは、2マス空けて文を始める。
     ただし、段落の初めを空けなくてもよい。

 3−5−2.改行は、墨字と同じように語の途中で途切れて次の行に移る。
     そのとき、音節・1つの記号・1つの英字の、途中では改行しない。その前のところで次の行へと移る。
     また、改行は空白を含めて行なう。つまり、改行のときに文末まで字がきて丁度区切りになるときは、次の行の初めに空マスを1つおいて始めることになる。

 3−5−3.詩・短歌・俳句などで、文中にスペースが入るところには、空マスを2つ置く。

 3−5−4.ここから以下に示す表記の形式については、規則というより参考として示すに留まった。墨字と同じであることを基本とするが、点字にするための工夫を各自で行なう。

 3−5−5.題名は、前を6マス空ける。副題があれば、副題の前を4マス空ける。
     ただし、その空マスの数を変えてもよい。

 3−5−6.墨字で行があいていれば、点字文でも行あけをする。
     ただし、行あけをしなくてもよい。 

 3−5−7.日付・著名・付記など、墨字で右寄せするものは同じように右寄せし、墨字で右寄せの際に1字分あきがあれば、同じように1マスあける。
     ただし、これは自由に変更してよい。

 3−5−8.詩では、すべての行の左端を2マスずつ空けて揃えたりする。
     短歌では、後半を改行して4マス空けて続けたりする。

 3−5−9.表では、上の枠線、表の題名、説明書き、表の内容、下の枠線、の順で記す。
    その枠線は、長音符を連ね、両端のみ折れて角をつくる。
    表では、上下の枠線以外の線はなるべく省略する。つまり横線も縦線も省き、列のそれぞれの初めを揃えて明瞭に表記する。
    表で示すべきその他の情報は、題のすぐ下の行から、説明書きに書き換えて表記するとよい。
    説明書きと表の内容との間は、行あけを行なう。

 3−5−10.表紙では、全体を中央寄せにする。

 3−5−11.表紙の題名は四方を枠で囲う。枠は、外縁部を縁取るように直線を示す点字を連ね、端にのみ角をつくる。
    題名と枠との間は、上下は空けず、左右はできれば2マス空ける。
    表紙の題名を囲う枠は、四方でなく上下のみでもよい。
    また、その囲い枠のなかに、題名の下に副題や巻数などを記してもよい。

 3−5−12.これらの囲い枠などは、線形のかわりに、単調に連続するパターンの点字を連ねて装飾的にしてもよい。

 3−5−13.表紙に記す内容は、上から順に、著者・訳者・題名・副題・巻数などとする。

 3−5−14.表紙全体の一番外側を、線を示す点字を用いた枠で囲うと、表紙であることが分かりやすい。

 3−5−15.ページ数は、表紙と目次とを除いたところから数え始め、奇数ページのみを、右上の端に数符をつけて示す。
    表紙や目次にページ数をつけるときは、それと区別して下がり数字を使用してもよい。

 3−5−16.目次は、表と同じやり方で表記し、表に使う上下の枠線を省く。
    文とページ数との間に、点線を置いてもよい。点線の両端は区切る。



 4.初級点字の発案にあたって


 4−1.ユニバーサルデザインの文字へ

 点字は、視覚障害者の文字文化を担う大切なものです。
 それでありながら、初心者が点字を自在に活用するにはハードルが高すぎる現状があるため、より簡便な点字規則の出現が望まれていました。
 周知のとおり日本点字での点訳では、まず表意文字と表音文字の混交した活字文を、表音文字に換えて分かち書きするところから始め、さらに細かな判断をして処理するために、テキストや辞書を常に繰ることが強いられます。この作業が煩雑であっても、それ以外の簡便な規則体系などはありませんでした。

 ちょうどそれと対照的なのが、英文の点字です。英文の点字の正書法には段階が設けられていて、アルファベットをそのまま点字に置き換えればほとんど点訳が済んでしまうGradeTは、晴眼者・中途視覚障害者・年少者などの点字初心者にも分かりやすく、活字と点字の架け橋に例えることができます。初級点字は、英文の点字のGradeTに当たる日本点字というコンセプトを念頭に置きました。日本語なので多少は手間のかかる処理が残りますが、それでも一般の点字表記法に比べると大変わかりやすい規則になっています。英文の点字のGradeTよりも優れている点は、初級点字を習得した時点で、一般の日本点字表記法による点訳文をほぼ完全に読むことができることです。
 
 近年の情報機器や音声技術の飛躍的な発達に伴い、視覚障害をとりまく世界も大きく変容しています。点字に関しても、点訳ソフトや点字プリンタ、そしてデータの共有といった技術面に関しては発展がありました。しかし、点字の役割は相対的には縮小し、点字利用者数も減少傾向にあります。さらに点字図書の出版物に関しては、部数や内容だけでなくコストや製作技術の面でも依然として課題が残っており、点字文化の置かれた環境は厳しさを増しているといえます。
 現行の日本点字表記法は、健常者にも読み書きできることが望まれてはいるものの、それは視覚障害者のために、ということが大前提となっています。もしも点字文化が視覚障害者の占有的なツールではなく、晴眼者と共有して使用できるものにすることができれば、状況は変わるでしょう。視覚障害者と晴眼者の文化的な壁が低くなるからです。
 点字をいわばユニバーサルデザインの文字へと変革していくことが大切だと思います。そのためには、点字がもっと多くの人々に受け入れられる使いやすい物に工夫することと、そして、点字は視覚障害者だけのためのものである、という意識を変えることが必要です。
 初級点字は、そうした目標を実現するために、文法の面で工夫を加えて点字のユニバーサルデザイン化を促す試みです。

 初級点字の社会的な役割を一言でまとめると、日本の点字文化が誕生以来ずっと見落としてきた「晴眼者による利用を想定する」ということを補うものです。晴眼者と視覚障害者とをまったく対等の立場におこうとする態度は、おそらく現代に至って初めて賛同されうるようになった思想なのだと思います。


 4−2.点字と初級点字との比較

 日本点字表記法の性質と、初級点字の性質とを比較してみます。

 4−2−1.現行の日本点字表記法の性質

 (1)点訳が主な用途であり、活字原本の存在が前提になっている。
 (2)読み手としての視覚障害者が、点字文の利用者対象である。 
 (3)本格的に点訳できるようになるのには、ふつう数ヶ月から数年を要する。
 (4)文法の難度が上がっても、読み手が出来るだけ速く読めるように留意してある。
 (5)発音に重点がおかれているため、読み上げに適している。

 (6)分かち書きの細かな規則が難しいため、字引きが必携である。
 (7)分かち書きの判断に迷って字引を引いても、自信を持った判断が下せない場合がある。 
 (8)約10年毎に改正があり、その都度、変更箇所を直す必要がある。
 (9)文法用語など日本語の知識が必要で、習得に時間がかかること。
 (10)ある程度習得するまでは、自信を持って使用することができないので、素人感覚を持ち続けなければならない。
 (11)総合的にみて、点字は難しいというイメージが強い。

 (12)自動点訳ソフトの処理では誤りのない点訳が困難である現状。
 (13)視覚障害者以外の利用対象者については、想定外である。
 (14)習得しても、他者に文法を教えることは簡単ではない。
 (15)英語の点字のような段階は設けられていない。

 4−2−2.初級点字の性質

 (1)点訳よりも、原本不在の点字書きをおもに想定している。
 (2)利用者対象は視覚障害の有無によらず、日本語を使用する万人を想定している。
 (3)数時間の学習を経れば初心者でも点字文が読み書きできる、やさしい点字の規則。
 (4)文法をできるかぎり簡潔にまとめ、読み手の読みやすさよりも、書き手の書きやすさに重点を置いている。
 (5)活字文に近い文法で、音読よりも黙読に適している。 

 (6)字引きを使用せずに表記でき、書きやすい。 
 (7)分かち書きの判断に迷っても、国語辞典を引けば自分で自信を持った判断を下すことができる。
 (8)正書法に改正があっても、初級点字を改正しないでおくことで、混乱を軽減できる。 
 (9)煩雑な文法用語なしに学習できるため、初心者や年少者にも習得しやすい。 
 (10)初心者が、自信を持って正しい点字表記が実現できる。 
 (11)視覚障害の有無やボランティアにこだわらない利用者をも配慮した点字規則なので、点字活用の幅が広がる。

 (12)誤りの発生しない自動点訳ソフトの開発が可能になることなどが期待できる。
 (13)一般の日本点字表記法の使用者にも、類推できるため完全な可読性を保持している。
 (14)習得した時点で、一般の日本点字表記法による点訳文を、初級点字で扱う範囲に関しては類推して読むことができる。
 (15)本格的な点訳を志す人のためのステップになる。


 4−3.「初級点字」発案までの道程

 そもそも「初級点字」は、点字フォント作家の筆者(河西白雨)が晴眼者向けの点字本を出版するための企画段階で、現行の点字規則が煩雑なことに苦悩したことから発案されました。
 SNSのMixiにある点字コミュニティではそれほど活発な議論はなかったものの、いくつかの貴重な意見が得られました。その他、日本点字図書館や茨城県立点字図書館では点字の使われている現場を垣間見たり、言語学に詳しい友人からは役立つ情報を得ることがありました。助言や励ましの言葉をくださったすべての方に、この場を借りて感謝の意を表します。
 この「初級点字 草案」はインターネット上で公開し、広く意見を求めた後、何らかの処理作業を経て規則をもう一度吟味して、「初級点字」へとまとめ上げる予定です。


 4−4.正書法への提案

 本来、日本点字の規則については日本点字委員会が唯一の制定機関とされており、「日本点字表記法 2001年版」が2008年4月現在のいちばん新しい日本点字の正書法です。
 「初級点字 草案」は正書法ではなく、提示されたばかりでもあるので、まだ多くの方に読んでいただいていない甚だ心もとない草案ではあります。それでも、私の持てる力の限りを尽くして作成しました。どうぞ、皆様の意見の表明および活発な議論をお願い申し上げます。
 現在、日本点字表記法に付随する形で初級点字を正書法に組み入れられないかどうかの検討を、日本点字委員会に具申したいと予定している最中です。いくつかの点字関連の団体にも同資料をメールで送信します。
 「初級点字 草案」は、「絵点字フォント」ホームページにてご覧いただけます。
 http://www4.ctktv.ne.jp/~kasa1881


 4−5.参考文献

 ○ 「日本点字表記法 2001年版」日本点字委員会、大活字、(2001)2002
 ○ 「日本点字表記法 1990年版」日本点字委員会、大活字、1990
 ○ 「点字表記辞典 改訂新版」視覚障害者支援総合センター、博文館新社、(2002)2006
 ○ 「点訳のてびき 第3版」全国視覚障害者情報提供施設協会、大活字、(2002)2007
 ○ 「点訳のてびき 第3版 Q&A」全国視覚障害者情報提供施設協会、大活字、2004
 ○ 「初めての点訳 第2版 指導者用マニュアル」全国視覚障害者情報提供施設協会、大活字、2003
 ○ 「パソコンで仕上げる点訳の本&図形点訳」長尾博 著・畑中滋美 作図、読書書房、2005
 ○ 「国語1」「国語2」「国語3」光村図書出版(株)、1990/1991/1992


 4−6.著作権

 「初級点字 草案」の1・2・3章については、パブリックドメイン(著作権放棄)と致します。
 改変の際には、その旨を本文に付記するようにしてください。
 「初級点字 草案」の4・5章については、著作権を筆者(河西白雨)が保持し、改変は認めませんが、自由に転載して構いません。



 5.例文集

 5−1.例文の内容
  a. 漢字かな混じりの現代文による表記
b. 現代仮名遣いのひらがなによる表記
c. 日本点字表記法 2001年版による表記
d. 初級点字による表記       ←◎
e. 初級点字で可能な別の表記例   ←○
 (訂)印は、誤りがあるご指摘をいただいて訂正した事項です。

 5−2.
  a. 人は未来へ向かう。
b. ひとはみらいへむかう。
c. ひとわ みらいえ むかう。
d. ひとわ みらいえ むかう。

 5−3.
  a. 金印には漢の倭の奴の国王と記されてあった。
b. きんいんにはかんのわのなのこくおうとしるされてあった。
c. きんいんにわ かんの わの なの こくおーと しるされて あった。
d. きんいんにわ かんのわのなのこくおうと しるされてあった。
e. きんいんにわ かんの わの なの こくおうと しるされてあった。

 5−4.
  a. ここはどこだろうかと、その辺の人に訊いた。
b. ここはどこだろうかと、そのへんのひとにきいた。
c. ここわ どこだろーかと、 そのへんの ひとに きいた。(訂)
d. ここわ どこだろうかと、 そのへんのひとに きいた。
e. ここわ どこだろうかと、 その へんの ひとに きいた。

 5−5.
  a. 渡航に際して、乗船できるようにお願いします。
b. とこうにさいして、じょうせんできるようにおねがいします。
c. とこーに さいして、 じょーせん できるよーに おねがい します。(訂)
d. とこうに さいして、 じょうせんできるように おねがいします。

 5−6.
  a. 歩き疲れた体に水が染み渡り、元気が満ちてきた。
b. あるきつかれたからだにみずがしみわたり、げんきがみちてきた。
c. あるきつかれた からだに みずが しみわたり、 げんきが みちて きた。
d. あるきつかれた からだに みずが しみわたり、 げんきが みちてきた。

 5−7.
  a. 話し合おうと言って笑いながらやって来たのが彼だった。
b. はなしあおうといってわらいながらやってきたのがかれだった。
c. はなしあおーと いって わらいながら やって きたのが かれだった。
d. はなしあおうといってわらいながらやってきたのが かれだった。

 5−8.
  a. それに関して説明すればこうして理解させることができる。
b. それにかんしてせつめいすればこうしてりかいさせることができる。
c. それに かんして せつめい すれば こー して りかい させる ことが できる。(訂)
d. それに かんして せつめいすれば こうして りかいさせることが できる。

 5−9.
  a. その度胸ある人は、人間なるようになると思っている。
b. そのどきょうあるひとは、にんげんなるようになるとおもっている。
c. その どきょー ある ひとわ、 にんげん なるよーに なると おもって いる。
d. そのどきょうあるひとわ、 にんげんなるようになると おもっている。

 5−10.
  a. そうしていただければ幸いです。
b. そうしていただければさいわいです。
c. そー して いただければ さいわいです。(訂)
d. そうしていただければ さいわいです。

 5−11.
  a. どうでもいいが、どうなるんだろう?
b. どうでもいいが、どうなるんだろう?
c. どーでも いいが、 どー なるんだろー?
d. どうでもいいが、 どうなるんだろう?

 5−12.
  a. 内容が無いということのないようにする。
b. ないようがないということのないようにする。
c. ないよーが ないと いう ことの ないよーに する。
d. ないようがないということのないようにする。
e. ないようがないということの ないようにする。

 5−13.
  a. 彼は、言うことは言わねばならないということを仰っていた。
b. かれは、いうことはいわねばならないということをおっしゃっていた。
c. かれわ、 いう ことわ いわねば ならないと いう ことを おっしゃって いた。
d. かれわ、 いうことわいわねばならないということをおっしゃっていた。

 5−14.
  a. この所お金がなくなって、それどころではなくなった。
b. このところおかねがなくなって、それどころではなくなった。
c. この ところ おかねが なくなって、 それどころでわ なく なった。(訂)
d. このところ おかねがなくなって、 それどころでわなくなった。

 5−15.
  a. こんな所にお金が落ちていたらどうしよう!
b. こんなところにおかねがおちていたらどうしよう!
c. こんな ところに おかねが おちて いたら どー しよー!(訂)
d. こんなところに おかねが おちていたら どうしよう!

 5−16.
  a. 清く正しく美しく生きろと先生に言われた。
b. きよくただしくうつくしくいきろとせんせいにいわれた。
c. きよく ただしく うつくしく いきろと せんせいに いわれた。
d. きよく ただしく うつくしくいきろと せんせいにいわれた。

 5−17.
  a. それは良い悪いとか綺麗汚いの話ではない。
b. それはよいわるいとかきれいきたないのはなしではない。
c. それわ よい わるいとか きれい きたないの はなしでわ ない。
d. それわよいわるいとか きれい きたないの はなしでわない。

 5−18.
  a. ギラギラ眩しい朝日も薄明るい朝焼けも味わい深い。
b. ぎらぎらまぶしいあさひもうすあかるいあさやけもあじわいぶかい。
c. ぎらぎら まぶしい あさひも うすあかるい あさやけも あじわいぶかい。
d. ぎらぎら まぶしい あさひも うすあかるい あさやけも あじわいぶかい。

 5−19.
  a. 帰って来て欲しいと言ってほしい。
b. かえってきてほしいといってほしい。
c. かえって きて ほしいと いって ほしい。
d. かえってきてほしいといってほしい。

 5−20.
  a. 丁度特別急行の電車が来た。
b. ちょうどとくべつきゅうこうのでんしゃがきた。
c. ちょーど とくべつ きゅーこーの でんしゃが きた。
d. ちょうど とくべつきゅうこうのでんしゃが きた。
e. ちょうど とくべつ きゅうこうの でんしゃがきた。

 5−21.
  a. 新人類が全世界でド派手に繰り広げる大宴会!
b. しんじんるいがぜんせかいでどはでにくりひろげるだいえんかい!
c. しんじんるいが ぜんせかいで どはでに くりひろげる だいえんかい!
d. しんじんるいが ぜんせかいで どはでに くりひろげる だいえんかい!
e. しん じんるいが ぜん−せかいで ど はでに くりひろげる だい えんかい!

 5−22.
  a. 旅がらすの浪人侍が柱時計をみじん切りにした。
b. たびがらすのろうにんざむらいがはしらどけいをみじんぎりにした。
c. たびがらすの ろーにんざむらいが はしらどけいを みじんぎりに した。
d. たびがらすのろうにんざむらいが はしらどけいを みじんぎりにした。
e. たびがらすの ろうにん ざむらいが はしら どけいを みじんぎりにした。

 5−23.
  a. 点字の父・ルイ・ブライユと、日本点字の翻案者・石川倉治先生。
b. てんじのちち・るい・ぶらいゆと、にほんてんじのほんあんしゃ・いしかわくらじせんせい。
c. てんじの ちち・ るい ぶらいゆと、 にほん てんじの ほんあんしゃ・ いしかわ くらじ せんせい。
d. てんじのちち・ るいぶらいゆと、 にほんてんじのほんあんしゃ・ いしかわくらじせんせい。
e. てんじの ちち・ るい ぶらいゆと、 にほん てんじの ほんあんしゃ・ いしかわ くらじ せんせい。

 5−24.
  a. 知らず知らずのうちに遠くへ遠くへやってきていた。
b. しらずしらずのうちにとおくへとおくへやってきていた。
c. しらず しらずの うちに とおくえ とおくえ やって きて いた。
d. しらずしらずのうちに とおくえとおくえやってきていた。
e. しらず しらずの うちに とおくえ とおくえやってきていた。

 5−25.
  a. ギブアンドテイクなライフ・スタイル。
b. ぎぶあんどていくならいふ・すたいる。
c. ぎぶ あんど ていくな らいふ すたいる。(訂)
d. ぎぶあんどていくな らいふすたいる。
e. ぎぶ あんど ていくな らいふ・ すたいる。

 5−26.
  a. ドンドコバタバタがたごとがたごとと音がした。
b. どんどこばたばたがたごとがたごととおとがした。
c. どんどこ ばたばた がたごと がたごとと おとが した。
d. どんどこばたばた がたごとがたごとと おとがした。
e. どんどこ ばた ばた がたごと がたごとと おとがした。

 5−27.
  a. あの子は快刀乱麻を断つようにすべてをこなしていった。
b. あのこはかいとうらんまをたつようにすべてをこなしていった。
c. あの こわ かいとー らんまを たつよーに すべてを こなして いった。
d. あのこわ かいとう らんまを たつように すべてを こなしていった。
e. あのこわ かいとうらんまをたつように すべてを こなしていった。

 5−28.
  a. 君と遊んだあの日は日曜日であった。
b. きみとあそんだあのひはにちようびであった。
c. きみと あそんだ あの ひわ にちよーびで あった。
d. きみと あそんだ あのひわ にちようびであった。
e. きみと あそんだ あの ひわ にちようびであった。

 5−29.
  a. あの人は行ったまんまで帰ってこなかった。
b. あのひとはいったまんまでかえってこなかった。
c. あの ひとわ いった まんまで かえって こなかった。
d. あのひとわ いったまんまで かえってこなかった。

 5−30.
  a. この前、ここの前に警察が立っていたよ。
b. このまえ、ここのまえにけいさつがたっていたよ。
c. このまえ、 ここの まえに けいさつが たって いたよ。
d. このまえ、 ここのまえに けいさつが たっていたよ。
e. このまえ、 ここの まえに けいさつが たっていたよ。

 5−31.
  a. もう歩かないなんて意気地ないことを言ったら意気地なしだぞ!
b. もうあるかないなんていくじないことをいったらいくじなしだぞ! 
c. もー あるかないなんて いくじ ない ことを いったら いくじなしだぞ!
d. もう あるかないなんて いくじないことをいったら いくじなしだぞ!

 5−32.
  a. 本格的な点訳を志す人のためのステップになる。
b. ほんかくてきなてんやくをこころざすひとのためのすてっぷになる。
c. ほんかくてきな てんやくを こころざす ひとの ための すてっぷに なる。
d. ほんかくてきな てんやくを こころざす ひとのためのすてっぷになる。
e. ほんかくてきな てんやくを こころざす ひとの ための すてっぷになる。

 5−33.
  a. よせばよいものを、危ない橋を渡ったものだ。
b. よせばよいものを、あぶないはしをわたったものだ。
c. よせば よい ものを、 あぶない はしを わたった ものだ。
d. よせばよいものを、 あぶない はしを わたったものだ。

 5−34.
  a. どうしても駄目だというならば仕方がない。
b. どうしてもだめだというならばしかたがない。
c. どー しても だめだと いうならば しかたが ない。
d. どうしても だめだというならば しかたがない。 

 5−35.
  a. どうして、と訊かれても、どうしても、です。
b. どうして、ときかれても、どうしても、です。
c. どーして、 と きかれても、 どー しても、 です。
d. どうして、 と きかれても、 どうしても、 です。

 5−36.
  a. 別々の考え方をする。
b. べつべつのかんがえかたをする。
c. べつべつの かんがえかたを する。
d. べつべつのかんがえかたをする。
e. べつべつの かんがえかたをする。

 5−37.
  a. その子によろしくとお伝えください。
b. そのこによろしくとおつたえください。
c. その こに よろしくと おつたえ ください。
d. そのこに よろしくと おつたえください。

 5−38.
  a. 北海道までは船で行きます。
b. ほっかいどうまではふねでいきます。
c. ほっかいどーまでわ ふねで いきます。
d. ほっかいどうまでわ ふねでいきます。

 5−39.
  a. 君の意見には賛成できませんね。
b. きみのいけんにはさんせいできませんね。
c. きみの いけんにわ さんせい できませんね。
d. きみのいけんにわ さんせいできませんね。
e. きみの いけんにわ さんせいできませんね。

 5−40.
  a. 豊かな自然のあふれる知床の風景。
b. ゆたかなしぜんのあふれるしれとこのふうけい。
c. ゆたかな しぜんの あふれる しれとこの ふーけい。(訂)
d. ゆたかな しぜんのあふれる しれとこのふうけい。
e. ゆたかな しぜんの あふれる しれとこの ふうけい。

 5−41.
  a. 人生が過ぎるのはあっという間で学問は成しがたいものである。
b. じんせいがすぎるのはあっというまでがくもんはなしがたいものである。
c. じんせいが すぎるのわ あっと いう まで がくもんわ なしがたい もので ある。
d. じんせいが すぎるのわ あっというまで がくもんわ なしがたいものである。

 5−42.
  a. 桜が舞っている風景を感じてください。
b. さくらがまっているふうけいをかんじてください。
c. さくらが まって いる ふーけいを かんじて ください。
d. さくらが まっている ふうけいを かんじてください。


                          「初級点字 草案」了 ・・・・・・ 2008年4月20日 河西白雨

 :::::::::::::   もくじ   :::::::::::::

  1 初級点字について
   1−1 目的
   1−2 位置づけ
   1−3 方針
   1−4 規則の方向性
   1−5 扱わない表記

  2 初級点字の表記法
   2−1 前提
   2−2 原則
   2−3 分かち書き
   2−4 記号・数・英字
   2−5 形式

  3 やさしい説明による初級点字の表記法
   2−1 前提
   2−2 原則
   2−3 分かち書き
   2−4 記号・数・英字
   2−5 形式

  4 初級点字の発案にあたって
   4−1 ユニバーサルデザインの文字へ
   4−2 点字と初級点字との比較
   4−3 「初級点字」発案までの道程
   4−4 正書法への提案
   4−5 参考文献
   4−6 著作権

  5 例文集

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